マーケティング
マーケティングとは「商品が売れる仕組み作り」であり、「売れる商品づくりに必要なプロセス」でもあります。新商品が陳腐化するまでのスピードが早い現代においてマーケティングは顧客ニーズを吸い上げた商品の提供を可能にする重要な行動です。
●マーケティング・コンセプト
マーケティングは昔から現在にかけて意味合い、目的の変遷があります。
・生産志向
生産志向とは如何に生産効率を上げるか、に注力する事です。需要が供給を上回っているマーケットでの志向になります。
・製品志向
製品志向は「良い商品を作れば自然に売れる」という志向です。顧客のニーズは考慮していないので、モノで溢れている現代のマーケットとはミスマッチです。
(顧客ニーズを追えていない状態をマーケティング・マイオピアと言います。)
・販売志向
販売志向は生産効率ではなく販売効率を重視した志向です。
(テレアポや訪問営業で割高の投資不動産を売りつける会社は販売志向です。笑)
・顧客志向
現代マーケティングの主流です。製品を作り、顧客ニーズを知り、販売するのではなく、顧客ニーズを知り、製品を作り、販売する志向です。
販売志向をプロダクト・アウト、顧客志向をマーケット・インと言います。
・社会志向
CSR活動もそうですが、顧客ニーズだけでなく社会の要求にも応える志向です。
●マーケティング戦略の階層
①戦略的マーケティング
企業戦略に近い戦略であり、外部環境を認識した上で経営資源の配分を決定します。
②マーケティング・マネジメント戦略
こちらはマーケティングの「4P」(製品、価格、チャネル、プロモーション)を統合する戦略です。この統合をマーケティング・ミックスと呼びます。
③マーケティング機能別要素戦略
マーケティングの4Pに関する各要素別の戦略です。
●マーケティングのプロセス
企業戦略と近しいですが、まず環境分析を行い、シェア率等の目標設定をし、標的市場の選定をした後マーケティング・ミックスの実行をします。
標的市場の選定はまず市場を細分化する「セグメンテーション」を行い、
どのセグメントで戦うかを選ぶ「ターゲティング」を行います。
最後に自社をどのように差別するかを決める「ポジショニング」を行います。
ターゲティングですが、細分化したセグメントを意識せずにマーケティング・ミックスを実行することを「無差別型マーケティング」、細分化した全てのセグメントに各々のマーケティング・ミックスを実行する「差別型マーケティング」(フルライン戦略)、細分化した一部のセグメントに特化してマーケティング・ミックスを実行する「集中型マーケティング」の3種類があります。
ポジショニングですが、フルライン戦略を採っている場合、ある商品が別の商品の売り上げを食ってしまう現象が起きる可能性があります。これを「カニバリゼーション」と言います。
●マーケティング・リサーチ
顧客ニーズを探るマーケティング・リサーチはまず調査の目的を定め、次にインターネット等から収集できる情報(2次データ)を集めた後本調査(1次データ)の収集に入ります。データ収集には質問法、観察法、実験法の3種類があり、質問法は面接や電話、郵送でエンドユーザーの意見を収集する方法です。
観察法ですが、例えばアパレルの実店舗であれば客が店内をどういったルートで回るのか、実験法は商品レイアウトを変えてみるといった方法です。
●消費者の行動・心理
・購買意思決定プロセス
顧客が商品を購入する(購買行動)が完結するまでには、
問題認知:「車が欲しい」と認識する
情報探索:「どんな車があるのか」調査する
代替品評価:「A社の車が魅力的だがB社はどうだろうか」
購買決定:「A社の車を買う」
購買後の行動:「A社の車に乗る」
といった5つの過程があります。
・認知的不協和
「買ってよかったのかな」と消費者が自身の購買行動に疑問を持つ現象です。
・購買決定行動のタイプ
①日常的反応行動
例えるなら「タマゴ」です。消費者はその製品を熟知しており、ブランドの選択基準もしっかり持っているので瞬間的に購買決定が行われます。
②限定的問題解決
例えるなら「洋服」です。製品について熟知しているものの、ブランドについてはあまり知らないため、新しいブランドが登場した際は既存のブランドと比較検討し購買決定が行われます。
③拡大的問題解決
例えるなら「自動車」です。製品についてもブランドについてもよく知らず、購入頻度も少ない商品の場合、情報探索や代替品評価に多くの時間を費やします。
・購買行動の規定要因
暴走族に所属している以上バイクは必須であるように、消費者が所属するコミュニティが購買行動にベーシックな影響を与えています。
文化的要因:消費者の文化や社会階層
社会的要因:※準拠集団、家族
個人的要因:消費者の年齢やライフスタイル
心理的要因:経験や行動による信念
※友達、家族、会社の同僚、将来自分が所属したいと願うコミュニティ 例:お金持ち 等、個人の行動に影響を与える集団を準拠集団と言います。
・ロジャースの普及理論
ロジャースさんは製品が普及する消費者の順番として、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティー、ラガードの5つがあり、
イノベーターとアーリーアダプター(上位16%)までに如何に普及させるかが重要であると主張しました。また、別の学者のムーアさんはこの16%の壁をキャズム(深い溝)
と表現し、乗り越えるのはかなり難しく、製品普及の分かれ道と主張しています。
●購買行動分析
・アサエルの購買行動類型
アサエルさんは「関与水準」と「知覚差異」という2つの軸から、4つの購買行動類型に分類しました。
関与水準とは「製品へのこだわり度」
知覚差異とは「ブランドによる違いの理解度」です。
関与には「認知的関与」と「感情的関与」があり、
前者はコスパなど功利的動機に基づく関与であり、後者はカッコよさなど感情面での充足に基づく関与です。
①情報処理型
関与水準が高く、知覚差異も大きい場合、人は多くの時間を購買行動に費やします。
(吟味します。)
②バラエティ・シーキング型
関与水準は低いものの、知覚差異が大きい場合、人は頻繁にブランド・スイッチングを行います。(いろんなブランドを試します。)
③不協和低減型
関与水準は高いものの、知覚差異は小さい場合、認知的不協和が生じやすいので、アフターサポートが重要です。
④習慣型
関与水準が低く、知覚差異も小さい場合、人は同じものを購入し続けたり、低価格のものを選びます。
・AIDMA、AISAS
AIDMAは、消費者が商品購入にいたるまでのプロセスを「Attention(認知)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の5つに整理し、AISASでは、AIDMAにあった「Desire」と「Memory」を「Search(検索)」に置き換え、「Action」の後に「Shere(共有)」を追加しています。
この2つの違いを端的に表すのは「インターネットの普及」です。
従来では欲しいと思った商品を記憶し、吟味してから購買という流れでしたが、
インターネットを利用することで比較・検討が高速化し「吟味」の時間は削ぎ落とされ、代わりに口コミ、商品レビューの投稿といった「シェア」の時間に代わりました。
・精緻化見込みモデル
広告を見た消費者が広告の詳細内容ではなくパッケージやCM女優等の要素で購買意思決定を下すモデルです。
商品の有する複数の属性の優先順位で消費者の態度を捉えようとする理論です。
加算型:全ての属性を評価し、総合点で購買を決める
連結型:各属性の最低基準を設ける
辞書編纂型:一番重視している属性が最も優れた商品を選択する
EBA型:選択した属性の中で一つでも基準を下回る場合は買わない