価格・チャネル戦略
●価格の決定要因
・需要の価格弾力性
価格弾力性=需要の変化率/価格の変化率
価格弾力性が大きい製品は価格を高くすると売れなくなるのに対し、弾力性が小さい製品は価格を変えても売上はあまり変わりません。
・製品のコスト
価格はコストに利益を上乗せしたものですので、コストの上下は価格の上下に直結します。
・競合の存在
競合製品の倍額では自社製品は売れません。競合を意識した価格設定は重要です。
・法的な規制
代表的なものには「独占禁止法」があります。これはメーカーが流通業者に対し販売価格を強制することができない取り決めです。
●価格設定方法
・コスト志向
コストプラス法とも呼びます。その名の通り、製造原価や仕入原価に一定の利益を上乗せすることで価格設定を行います。
・需要志向
需要の高低に合わせて価格設定をする方法です。(例えばテンバイヤーは需要志向で価格設定を行ったのち商品を仕入れます。私はテンバイヤーではありません。)
・心理的価格設定
心理的価格設定には以下のものがあります。
名声価格:あえて高い値付けをすることで消費者のステータス向上心に訴求する
端数価格:税抜1,000円よりも税抜980円の方が安く見える
慣習価格:「自販機のジュースが120円」のように一定価格のみ消費者が受け入れる
・競争志向の価格設定
①実勢型価格設定
プライスリーダー企業の価格に合わせて設定し、追随していく価格設定方法
②入札型価格設定
競りに近いもので競合企業の入札額を予想しながら価格設定を行う
●新製品の価格設定
・上澄吸収価格戦略
競合製品が少ないうちに新製品の価格を高く設定し製品開発コストを早く回収する戦略。模倣困難性が高く、価格弾力性が低い場合は有効な戦略。
・市場浸透価格戦略
新製品に安い価格を設定し、シェア拡大を目論む戦略。大量生産すればするほど利益が高まる、つまり規模の経済と経験曲線効果が働き、価格弾力性が高い場合に有効な戦略。
●製品ミックスによる価格設定
・抱き合わせ価格
ファストフードのセット価格のことです。
・プライスライニング
価格帯を広くラインナップすることで消費者が自社製品を選択しやすくすることです。
・キャプティブ価格
ケータイの本体代金を低価格にすることで月額使用料で稼ぐ目的の価格設定です。
●価格調整
・割引
割引には現金割引、数量割引、季節割引の3つが主にあります。現金割引は掛け払い出ない分回収リスクが減少する、数量割引は販売事務コストが軽減される、季節割引は低需要の時期に売上を向上させるといったように販売側のメリットを割引という形で還元しているという構図です。
・販売促進価格設定
ロスリーダー政策:スーパーの目玉商品で集客し、他の商品で利益を出す、という価格設定政策です。
エブリデーロープライス政策:大量仕入とローコストのオペレーションにより全商品を低価格で提供する政策です。コストコやIKEAがその例です。
・販売チャネルによる価格設定
チャネルとは「商流」を意味します。
①機能割引
メーカーが卸売に販売する価格は小売価格よりも低いです。つまり商流が浅ければ価格も下がるという仕組みになります。
②アローワンス
流通業者がメーカーの意図した広告や陳列をする事に対するお礼の割引です。
③リベート
取引時に割引をするのではなく取引完了から一定期間後にキャッシュバックする割引です。
●チャネルの種類
・直接流通
メーカー→消費者
・間接流通
メーカー→卸売・小売→消費者
チャネルには上記のように「長さ」と下記の「幅」という概念があります。
・開放的チャネル政策
流通業者を限定せずに幅広く商品を流通させる方法です。
メリットは販売数の増加、デメリットはチャネル管理が難しい事です。
・選択的チャネル政策
流通業者を何社かに選択、限定する方法です。
メリットは得意先の管理がしやすい事、デメリットは何社かに頼んでいるという浮気性な背景から流通業者のプロモーション等への熱心さが欠ける場合がある事です。
・排他的チャネル政策
専売店のみに販売権を付与する方法です。
メリットは自社のブランドを高める事(ここでしか買えない、特別感)に向いている事、デメリットは消費者の認知度向上が難しい事です。
排他的チャネル政策には専売店制度と一店一帳合制度の2種があり、前者は流通業者に自社製品のみを取り扱うように制限する制度、後者は卸売業者を指定、制限する制度です。
・垂直的マーケティングシステム(VMS)
近年ではメーカー同士、流通業者同士の競争ではなく、チャネル全体での競争が多くなっています。VMSには下記のシステムがあります。
①企業型
チャネル全体が1つの資本で垂直統合されているシステムです。
②契約型
別資本の会社間で契約関係により結びつくシステムです。フランチャイズチェーンとボランタリーチェーン、コーペラティブチェーンの3種類があります。
③管理型
契約によらず組織化するシステムです。
●電子商取引の流通チャネル
・オムニ・チャネル・リテイリング
実店舗、オンラインストア等すべての販売チャネルや流通チャネルを統合することをいいます。
・モール型ECサイト
Web上のショッピング・モールのようなスペースを提供するECサイトでAmazonや楽天市場等があります。モール型ECサイトは更にマーケットプレイス型とテナント型に分かれます。
モール内で商品を販売したい企業が、商品のデータのみを掲載するタイプのモール型ECサイトです。出店ではなく「出品」ですので、商品データはモール側が管理することになります。Amazonが代表格です。出品企業にとっては、自社のECサイト運用負担の軽減、事業の初期投資を抑えることができますが、企業の存在感を打ち出すことはできません。従って、商品力が売上を左右します。
・テナント型
テナント型は、現実世界のショッピング・モールと同様に、多くのECサイトが立ち並んだモール型EC市場です。楽天市場やYahoo!ショッピングが代表格になります。企業側の運用負担はありますが、店舗の特徴を出してブランド力を高める工夫ができます。出店企業は売上総額を自社の売上として計上し、モール側に販売手数料を支払います。