生産オペレーション
生産オペレーションには品質管理、設備管理、廃棄物管理、情報システムの4要素が必要です。
●品質管理
品質管理とは顧客満足を満たすために質が高い製品をできるだけ安いコストで提供するための管理を指します。これをクオリティーコントロール(QC)とも呼びます。
品質には「設計品質」と「製造品質」があります。
設計品質は「ねらいの品質」とも呼び、顧客の要求を満たす品質を目標として設定したものです。
製造品質は「結果の品質」とも呼び、製品の製造時に生じた品質です。また製造品質は基準に適合しないもの(不良品)は排除しなければなりませんので「適合の品質」とも呼ばれます。
・品質管理の変遷
米国ではTQCという考えが元々根付いていました。これは製造現場だけでなく全社的に
品質管理をする必要があるという考え方です。これがTQMに発展し、品質管理は企業活動自体を戦略的に品質向上させる必要があるという考え方に変化しました。
具体的には目的に関する原則(顧客視点)、手段に関する原則(具体的手法や注意点)、組織の運営に関する原則(各人の役割や心構え)の3原則を基本として活動を進めていきます。
こうしたTQM活動の国際的な基準は「ISO9000シリーズ」で規格化されています。
また、日本ではボトムアップで品質向上を目指す「QC」文化が根付いています。
・品質保証の活動
品質保証の活動とは「不良品を作らないようにする」活動です。
つまり「検査」になるわけですが検査には「全数検査」と「抜取検査」の2種類があります。前者は全て検査するので労力がかかりますが不良品を根絶できます。
後者は全品検査に比べて労力は少なくなりますが、ロットの一部しか検査しておらず、不良品が出た割合でロット毎に合否を決定するので不良品が混ざるリスクがあります。
本来合格ラインなのに引きが悪く不合格となる機会損失リスクを「生産者危険」、
本来不合格ラインなのに引きが良く合格となる不良品リスクを「消費者危険」と言います。
・QCの7つ道具
管理図:製品が工程や基準から外れていないかを継続的に管理するために使用。
パレート図:要素の数が多い順に左から並べる図。重点課題を明確にするために使用。
ヒストグラム:データ範囲毎のデータ個数(バラつき)を表すために使用。
散布図:2つの特性を縦、横軸に取ってデータを点で表したもの。
特性要因図:特性に関する大小様々な要因を紐付けて魚の背骨のように表す。
チェックシート:項目毎に個数、回数を記録するシートで点検作業などに用いる。
層別:上記6つの道具のデータ母集団を分割する事。より深く分析する際に用いる。
●設備管理
設備管理とは設備の計画、製作、保全、更新といった設備のライフサイクル全般の管理を表します。
・保全活動
保全活動は以下のものがあります。
予防保全:故障を未然に防ぐための活動
事後保全:故障が発見された後の活動
改良保全:設備が故障しにくくなる様に改良する活動
保全予防:設備の計画、設計段階から故障しにくくなる様にする活動
・設備効率
設備効率を構成するのは以下の要素です。
時間稼働率:設備の停止ロス(故障、段取り時間)を測定するための指標
性能稼働率:設備の性能ロス(チョコ停、空転、速度低下)を測定するための指標
良品率:不良ロスを測定するための指標
(良品が実際にどれだけ正常な時間、性能で生産されたか)
●廃棄物管理
廃棄物管理に関する法律に下記のものがあります。
・環境基本法
環境保全についての基本理念や事業者の責務を定めた法律です。
環境基本法に基づいた循環型社会の形成を目的に制定された法律です。
またこちらに基づいて「個別法」が制定されており、例えば容器包装リサイクル法や家電リサイクル法などがあります。
・廃棄物削減の取組み
3R(リデュース、リユース、リサイクル)がポイントとなります。廃棄物の発生抑制、資源再利用、別用途の資源として活用する事を意味します。
廃棄物をゼロにする取り組みの事を「ゼロエミッション」と言います。
●生産情報システム
近年の製造業では製品ライフサイクルの短命化を受け多種少量生産を余儀なくされています。(新技術を上回る技術革新のスピードが速くなっています。)
生産情報システムはその上で欠かせないものになっています。
●開発・設計情報システム
・CAD
製品の設計をコンピューターで行うシステムです。
・CAM
CADで設計したモデルを加工機械に直接インプットするシステムです。
・CAE
製品のシミュレーションを行うシステムです。
・PDM
上記のCAD、CAM、CAEを一元管理するシステムです。
●製品情報システム
・NC
数値制御される工作機械です。
・MC
機械に複数の工具がセットされており、自動的に使い分けながら加工する工作機械です。
・FMC
NCやロボットを組み合わせてまとまった工程を自動化するものです。
・FMS
工程全体をコンピューターで管理するシステムです。
・FA
工場全体を管理するシステムです。
・CIM
工場のみならず受注、設計、物流など製造業の全体を管理するシステムです。
●シミュレーション
・バーチャルマニファクチャリング
コンピューター内で仮想的な生産を行うシミュレーション手法。
・DMU
三次元CADによる製品設計モデルを用いてコスト削減や開発期間短縮を狙う手法。
乱数を用いてシミュレーションや数値計算を行う統計的推測法。
●サプライチェーンマネジメント(SCM)
サプライチェーンとは材料から生産、販売を経て製品が顧客に渡るまでの供給連鎖のことで、これの最適化を目指すのがSCMです。
SCM上で見受けられる「ブルウィップ効果」というものがありますが、これはサプライチェーンの連携が上手くとれず消費者のわずかな需要変動情報が増幅して卸業者やメーカーに伝わり在庫量が増加する現象を意味します。
これを防ぐにはサプライチェーンの中で需要、販売、生産情報をリアルタイムで共有する(川下の需要情報を川上にも共有する)、川下ベンダーの手動で在庫管理(VMI)をする、機械・設備・作業者・ワーク(加工対象物)から直接生産情報を採取しリアルタイムで管理者に提供すること(POP)などの方法があります。