資材・在庫管理
●資材管理
資材とは材料、部品のことです。これらを効率よく調達、管理することが製造業に追いては必須です。資材管理の主な機能は資材計画、在庫管理、購買管理、外注管理、倉庫管理、運搬管理になります。
●資材計画
・資材標準化
複雑な構造の製品は資材の種類や量が多くなりがちな為、扱う資材を制限し、種類も削減してスリム化を図る必要があります。これを資材標準化と呼びます。
資材標準化はまず現状の資材使用状況を調査し、標準資材を検討、決定した後資材の品質等の規格決定、最後に管理運用方法の決定をします。
資材標準化によってコスト削減、納期短縮、品質向上というメリットが得られます。
逆に、扱う資材を絞り込んでいますので市場変化やイノベーションといった外部環境の変化に対応しにくくなるというデメリットがあります。
・MRP
MRPとは生産に必要な資材がいつ、どれだけ必要か、つまり資材の所要量と時期を計画する仕組みです。
MRP運用にあたっては「基準生産計画」と「部品表」の2つの前提があります。
基準生産計画とは製品の生産計画の事です。ここでは資材を受注や需要予測に基づいて時期や量が決定する「独立需要品目」と、独立需要品目の需要から時期や量が決定する「従属需要品目」に分け、前者を基準生産計画に織り込み後者の時期数量を決定する仕組みがMRPです。
部品表はその名の通り製品を構成する部品の種類と数量をまとめたもので、部品の関連性が分かる「ストラクチャ型」と単純に部品種別と数量を並列した「サマリー型」があります。前者は複雑な部品構成の製品に、後者は比較的単純な部品構成の製品に採用されることが多いです。
MRPの手順はまず基準生産計画を立て、部品表に基づいて総所要量を計算し、在庫や発注状況を加味して正味所要量の計算をします。さらにより効率的に部品を仕入れる為にロットまとめをし、リードタイムを勘案して先行計算の実施をし、計画オーダーへと進みます。
●在庫管理
在庫管理は過剰在庫と過少在庫を防止する為に行います。
過剰在庫による在庫維持のための管理コスト削減や、不良在庫(デッドストック)の軽減、新製品への切り替え遅延の抑制を目的としています。
また、過少在庫による機会損失発生の予防、納期の遅延防止や緊急調達による余分な調達コストの削減も在庫管理の目的です。
在庫管理においては「発注方式」の選択が重要です。発注方式は下記のものがあります。
・定量発注方式
在庫量が一定の水準(発注点)になった時に一定量(経済的発注量)を発注する方式です。(Suicaのオートチャージ機能と一緒です)
メリットは管理がしやすいこと、デメリットは需要変動に対応しにくいことが挙げられます。よって需要が安定的で単価が低い品目に向いています。
発注点=調達リードタイム×1日平均需要量+安全在庫
安全在庫=安全在庫係数×需要量の標準偏差×√調達リードタイム
経済的発注量=√(2×1回あたり発注費用×年間需要量)÷1個あたり年間在庫維持費用
安全在庫とは需要変動や補充期間の不確実性を担保する為に必要とされる在庫で、
安全在庫係数とはどれくらいで品切れを防止するかを決める係数です。
この係数が大きくなると品切れリスクは低下しますが在庫量が多くなります。
経済的発注費用は「お得なまとめ買い」「何品以上注文で送料無料」をイメージすると分かり易いかと思います。
・定期発注方式
一定期間ごとに都度発注量を決めて発注する方式です。メリットは需要の変化に対応しやすいこと、デメリットは管理が複雑で手間がかかることです。
よって単価が高く、在庫調整の必要が高い品目に向いています。
・ダブルピン方式
イメージとして2つの倉庫に在庫を入れておき、①が空になったら②を使い始めて①を補充、②が空になったら①を使い始め②を補充と交互に在庫を使っていく方式です。
メリットは管理がし易いこと、デメリットは運用がルーズになりがちなことです。
よって単価が安い小物の管理に向いています。
品目をABCに分類し、パレート図を使って発注方式を検討する分析です。
A:品目は少なく、重要度が高い→定期発注方式
B:品目やや多め、Aの次に重要→定量発注方式
C:品目が多く、重要度が低い→ダブルピン方式
を採用します。
●購買管理
購買管理とは外部から在庫を調達するための管理活動です。
購買管理の原則として取引先、品質、数量、納期、価格を適正なものとすることです。
購買方式には以下のものがあります。
①購入時期や分量による分類
・定期購買方式
・定量購買方式
・当用買方式(都度購入。在庫削減ができるが入手時期、価格の安定性に欠ける。)
・長期契約方式(長期間の購入を契約し、分納してもらう。)
②価格決定方法による分類
・競争入札方式(数社で競争させる。品質が落ちるリスクがある。)
・見積合わせ方式(数社の見積で検討する。)
・随意契約方式(都度購入先を決める。単価が高くなるリスクがある。)
●外注管理
外注する目的はコストを削減すること、外部の生産能力や専門技術を活用することにあります。自社でやるか、外注するかの別を「内外製区分」と呼び、高度な品質が要求されるものは内製、専門技術や生産能力が自社では足りないものは外製にするのが適しています。
外注と似ていますが、アウトソーシングは外部企業の経営資源やノウハウを活用することを目的としています。アウトソーシングの例としては下記のものがあります。
ファブレス:自社で工場を持たず、生産を完全に外部に委託する
OEM(Original Equipment Manufacturing):自社製品を相手先のブランドで供給する
ファウンドリ:半導体業界で、メーカーに対して半導体チップの製造を行う
EMS(Electronics Manufacturing Service):電子機器の受託生産で、OEMに加えて設計も請け負う