組織構造
企業戦略、事業戦略を策定し、現代の経営戦略を勘案して
組織戦略に落とし込んでいきます。
●組織の要素
組織とは、共通理念を持ち、貢献する意欲を持ってコミュニケーションをする人々のかたまりです。さらに、組織が組織として成立するには「組織均衡」が重要です。
組織均衡とは、誘因(給料や働きがい)が貢献(労働)に勝る状況を表します。
(やりがいも無く、給料も少ない会社だと従業員は辞めたくなりますね。)
●組織と戦略
・チャンドラーは「組織は戦略に従う」と提言しています。組織があっても戦略がなければ本末転倒という意味です。
・対してアンゾフは「戦略は組織に従う」と提言しています。既存の組織が遂行できないような戦略は意味がないという意味です。
このように、組織と戦略は相関関係にあるということが分かります。
●組織設計原則
・専門化の原則
組織は分業化によって業務効率を向上させるという原則です。
・権限責任一致の原則
権限の割に責任が重い、責任の割に権限が大きいとモチベーションの低下や無責任な業務遂行に繋がります。権限と責任はバランスよく委譲する原則です。
・統制範囲の原則
一人の管理者がコントロールできる人数には限りがあるので、適正な人数を管理者に任せましょうという原則です。
・命令一元化の原則
メンバーは1人の直属の上司からのみ命令を受け、混乱を避けましょうという原則です。
・例外の原則
権限委譲の原則とも言い、日常業務の意思決定はメンバーに任せ、管理者は戦略的意思決定(例外的な意思決定)に集中しましょうという原則です。
●組織形態
組織は基本的にラインとスタッフに分かれます。
ライン:経営の主活動を表す役割です。
スタッフ:ラインを支援する役割です。
・ライン組織
命令系統がトップからの階層構造となっており、集権的な管理ができますが、管理者の負担が大きく、硬直化(融通が効かなくなる)するのが特徴です。
・ラインアンドスタッフ組織
上記デメリットを改善する為、ラインにスタッフメンバーを付ける組織ですが、命令系統が繁雑化し、混乱するリスクがあります。
・機能別組織
社長から直轄で、営業部門、生産部門と指令を出す組織です。専門化に集中でき、統制も取りやすいメリットがある反面、管理者の負担が大きく、硬直化(融通が効かなくなる)するのが特徴です。また、利益責任が不明確(社長直轄なので)な点もデメリットです。
・事業部制組織
社長直轄の各事業部から営業、生産と枝分かれしている組織です。
事業部ごとに利益責任が生まれますので、事業部は「プロフィットセンター」とも呼ばれます。迅速な意思決定ができ、トップの負担が軽くなるメリットがある反面、事業部ごとに営業、生産と分かれているので非効率であること、事業部間の連携はなく自身の事業部業務に固執するセクショナリズムが生まれるデメリットがあります。
・カンパニー制組織
事業部が多くなってくると、それを一纏めにして分社化するようになります。
分社化された会社ごとに利益責任は勿論、設備投資など投資責任も発生しますので「インベストメントセンター」とも呼ばれます。
カンパニー制のメリットは経営責任が明確になること、事業部制以上に意思決定が迅速になることですが、カンパニー間の連携が取りにくくなることや、実際には本社に上司がいるので、完全に独立したインベストメントセンターとして機能することは難しいといったデメリットがあります。
また、業界別ではなく業態別でカンパニー制を敷いた場合、顧客・売上げの取り合い(カニバリゼーション)を助長する可能性もあります。
・マトリクス組織
機能別組織と事業別組織両方のメリットを狙った組織で、まず営業、生産部門と社長直轄で分けた後、事業別に各部門へ割り振っていく組織です。
メリットは部門間、事業間での連携が取りやすく、人材を複数の役割で活用できることですが、1つの事業内に営業リーダー、生産リーダーと複数リーダーが存在する「ワンマンツーボス」状態となり、組織原則である「命令一元化の原則」に反しており、リーダー間の意見対立や派閥争いなどが生まれるデメリットがあります。
●組織ライフサイクル
製品、戦略にライフサイクルがあるように組織にもライフサイクルがあります。
・起業者段階
立ち上げ段階ですので、まだ管理活動は重要視されていません。次段階へ進むためにはリーダーシップが必要です。
・共同体段階
管理活動を整備する段階です。この時点でリーダーシップだけでは解決できない組織規模になっていますので、権限委譲が重要です。
・公式化段階
分権化し、規則や社内手続きも整備され、官僚的な組織になっていきます。
・精巧化段階
単に官僚的な組織であるのではなく、組織全体で、環境変化に柔軟に対応できるようになっている段階です。
●官僚制の逆機能
組織ライフサイクルによって組織が成熟化するに従って生じる弊害です。
①セクショナリズム
組織の部署内の権限や利害に固執して、組織全体の最適化を図ることができなくなることをいいます。
②形式主義
内容よりも形式を重んずる考え方のことをいいます。
③規則万能主義
規則万能主義とは、現実の課題に対して、規則がないから対応できないとする考え方のことをいいます。
④事なかれ主義
事なかれ主義とは、解決しなければならない問題が発生しているのに、それに関わろうとせず、放置することをいいます。
⑤員数主義
員数主義とは、本来の意図した目的に用いることができないものであっても、文書上、数の帳尻を合わせて、書類上の数値があっていればそれでよしとする考え方のことをいいます。
⑥繁文縟礼(はんぶんじょくれい)
繁文縟礼とは、規則が細かすぎて、手続きが煩雑なため、非効率になってしまうことをいいます。
⑦目的置換
目的と手段が逆転してしまうことをいいます。
●組織の環境変化への対応
・組織のコンティンジェンシー理論
外部環境によって最適な組織構造は異なるという理論です。
(企業はオープンシステムです。)
外部環境に対応するためには分化(専門性を高める)と、統合を創造的な方法で行い、
分化によって発生する葛藤(コンフリクト)を克服していく必要があります。
・不確実性への対応
オープンシステムである以上、組織は様々なイレギュラーに直面します。
このイレギュラーを組織力で解決するためには処理情報を減らすか、処理能力を上げる必要があります。
減らすには「組織スラック」つまり余剰資源(人員、在庫等)を活用する方法があります。
組織スラックには、ステークホルダーの誘因を高めたり、コンフリクト解消の資源となったり、イノベーションの促進にも貢献したりしますので、自社の組織スラックを把握しておくことは重要です。
また、能力を上げるには「横断的な組織を設ける」方法があります。
組織間の調整役を設けたり、各部門長を駆り出してマトリクス組織を作り、対応する方法です。