現代の経営戦略
★今回は現代の経営戦略についてです。根底は先に学んだ企業・事業戦略ですが国際化、IT化を織り込んだ経営戦略になります。
●技術経営
よく言う「MOT」の意味です。アジア諸国の進化によって日本企業の外部環境はグローバル化し、製品が陳腐化するスピードはどんどん早くなっています。
つまり、技術革新(イノベーション)によって高付加価値の商品を開発し、差別化する必要があります。
製品自体のイノベーションを「プロダクト・イノベーション」、製造プロセスのイノベーションを「プロセス・イノベーション」と言います。また製品や生産工程における積み重ねられ進歩していく小さな革新のことを「インクリメンタル・イノベーション」と言います。
・イノベーションライフサイクル
製品ライフサイクルがある様に、イノベーションにもライフサイクルがあります。
特徴は「S字曲線を描く」、「不連続性」の 2つです。
レコードとCDを例にとると、レコードの使用者数がゼロになる前からCDの利用者は増えています。つまり、レコードからCDのイノベーションライフサイクルは別モノ→連続性が無い、という意味ですね。
・持続的イノベーション
既存の製品を継続的に改良していくイノベーションです。
・破壊的イノベーション
全く新しい価値を提供するイノベーションです。先述したレコードとCDが代表例です。
前世代のリーダー企業が破壊的イノベーションについていけなくなる現象を指します。
ジレンマを回避するには持続的イノベーションと先進技術とバランスよく経営資源を投資していく必要があります。
●製品アーキテクチャ
「製品の設計思想」を指します。「インテグラル型」と「モジュール型」の2つに分類されます。
・インテグラル型
個々の部品ひとつひとつを完成品に合わせて摺り合わせをしていくアーキテクチャです。
インテグラル型のメリットはまとまりが良いこと(オーダーメイドなので)、模倣困難性が高いことが挙げられます。
デメリットは進化に時間がかかること、全部品オーダーメイドなので調整コストがかかることが挙げられます。
・モジュール型
既成部品を「インターフェース」という連結部品で組み合わせて製品を作るアーキテクチャです。
モジュール型のメリットは組み合わせが多種多様(セミオーダー)なので、バリエーション豊かに製品製造が可能なこと、調整コストがかからないことです。
デメリットはインテグラル型に比べて製品に無駄が多いこと、インターフェースの進化に時間がかかることが挙げられます。
インターフェースの進化スピードを上げるために製品アーキテクチャやインターフェースをモジュール提供企業に公開し、ネットワークを作ることを「オープンアーキテクチャ戦略」と言います。
「業界内で標準化された製品や規格」を指します。
OSやDVDディスクなどを例にとるとわかりやすいです。
デファクトスタンダードを中心に周辺製品が生まれ、業界が発展していきますので、
デファクトスタンダードを確立することは企業にとって莫大なメリットがあります。
デファクトスタンダードが発生しやすい業界とは「ネットワーク外部性」が働く業界です。これはその製品や規格の利用者が増えるほど利用者の得られる効能が高まるという意味です。(ケータイキャリアを考えると分かり易いかと思います。)
●ベンチャーマネジメント
ネットワークビジネスの発達やクラウドファンディングといった新しい資金調達のカタチが生まれ、今まで以上にベンチャー企業の活躍が目覚ましいです。
・ベンチャー企業の成長ステップ
シード期、スタートアップ期、急成長期、安定成長期を経て中堅企業になっていきます。シード期は起業前の準備段階、スタートアップ期は起業後、資金調達段階を表します。まだ与信がありませんので身内、身銭からの出資(スイートマネー)や投資家(エンジェル)からの出資が財源になります。将来有望な事業内容であればVC(ベンチャーキャピタル)、その他組合等★からの出資もあります。
★投資事業有限責任組合(ファンド)
投資事業有限責任組合では、組合の業務を執行する組合員は無限責任ですが、投資をするだけの組合員は有限責任となり、出資額以上の責任を負うことはありません。
急成長期は世間的認知度が上がり、事業が急成長する段階です。この段階では政府系金融機関からの融資を受けられる様になってきます。
安定成長期は世間での認知はもちろん、市場も成熟化するため成長率は鈍化しますが収益性は最も高くなり、民間金融機関からの融資も受けられる様になります。
また、この時期では株式公開(IPO)により大量の資金が流入し、大企業へと発展していくケースもあります。
・ベンチャー企業3つの試練
魔の川:シード期に生まれた技術シーズが製品化の段階までたどり着けない
死の谷:製品開発→事業化段階までたどり着けない 例:量産が困難
ダーウィンの海:死の谷を越えた後市場に商品を投入し、販売チャネルを整備し、競合に打ち勝って事業を軌道に乗せる事の困難さ
●提携戦略
・ネットワーク組織
他社と連携しながら事業展開をする関係性を意味します。
・戦略的提携
戦略的提携には主に3つの方法があります。
①合弁会社の設立
ジョイント・ベンチャーと呼ばれることもあります。M&A比べて投資資金が少なく済むメリットがあります。
(合併と違うところは消滅する会社がなく、互いの事業を組み合わせて新たに会社を作るので、双方から見て1社増えることになります。)
②共同研究(コンソーシアム)
複数企業がノウハウを持ち寄って研究開発を進める方法です。また、企業と大学が協力する産学連携、企業、大学、国の研究機関が連携する産学官連携があります。
③クロスライセンシング
提携企業同士でお互いの特許や権利を使用できるようにする提携方法です。
・プラットフォームビジネス
「取引の場」を提供するビジネスです。例として不動産仲介業や中古車ディーラーが挙げられます。(個人的にプラットフォームビジネスは参入障壁が低い分競合他社が多いものの、技術シードや初期投資がかなり抑えられるので「ダーウィンの海」まではすんなりイケるビジネスなのでは無いか、と考えます。)
その業界に関連する企業や研究機関などがネットワークを持って集積している地域を指します。単なる産業集積と違う点は「競合と協力」関係にあることです。
●国際化戦略
国産戦略には下記の4段階があります。
・輸出入(国内で生産→輸出、海外の生産品→輸入)
・海外生産(工場を海外に設けて生産→逆輸入)
・市場立地型投資(海外工場で生産「生産拠点」→販売拠点も海外に)
・グローバル化(世界中を一つの市場と考えて生産・販売を最適な場所で行う)
当然国際戦略にはリスクも伴います。単独出資(日本企業からの100%出資)はコントロールが取りやすい分投資金額が大きくなります。合弁企業の場合投資金額は少なく済みますが、コントロールを取りづらくなり、情報漏洩により模倣されるリスクがあります。また、生産拠点、販売拠点の選択によっては「カントリーリスク」も注意しなくてはなりません。
●CSR
CSRとは企業の社会的責任です。
「情報開示」を指します。企業の主なディスクロージャーは財務諸表、有価証券報告書といった開示義務を伴う制度的なモノ、
IR活動といった自発的なモノの2種類があります。
「企業統治」を指します。言い換えると「企業は誰を主体に走るのか」を意味します。
日本企業は経営者・従業員が主体なのに対し、米国は株主主体です。
前者は株主の圧力が少ない為長期的な経営が出来るのに対し、後者は株主の短期的利益を追求する気持ちが先行し経営も短期的なモノになりがちという特徴があります。