組織と人材
組織について学んだ後はさらにミクロな「人材」についてです。
●テイラーの科学的管理法ー課業管理
課業管理とは「一日あたりの作業量」を定量化し、管理する手法です。
テイラーさんはこれを「4つの管理原則」に分けました。
課業の設定、標準的条件の設定、達成した人は高賃金、できなかった人は低賃金にする
この4つです。
ただしこの管理法には問題点があり、「人を機械として見ている」点です。
(モチベーションや人間関係が何ら織り込まれていない状況です)
これを経済人モデルと呼び、人間は合理的に行動するという前提でしか成り立たないモデルとも言い換えることができます。
●ホーソン実験
これに対しホーソンさんは、単純な業績によるインセンティブだけではなく、
「作業条件」というアプローチから労働生産性との関連性を研究しました。
作業条件とは労働時間、休憩時間、オフィスの照明器具など様々です。
結果、作業条件と生産性には大した相関関係はありませんでした。
今度は出来高制(売ったら売った分だけ儲かる)を導入したところ、思った成果は出ませんでした。
こういう環境に置かれた集団は、「自分一人が頑張りすぎると全体のノルマが上がってしまうのでは?」といった忖度というか中庸を取る考え方にシフトしてしまったというのがオチです。これを「非公式」な行動基準と言います。
これらの実験結果から、生産に影響を与える要因は「非公式な人間関係」であると結論づけました。この実験に関わっていたレスリスバーガーさんは、経済人モデルに対し、
これを「社会人モデル」と名付けました。つまり人間は合理的にではなく、感情的な論理を持って行動する生物として捉える概念です。
しかし、感情を尊重するだけでは生産性は向上しません。「動機付け」や「モチベーション」が大切です。
マズローさんは心理学者の方で、人間の欲求を5段階に分けました。
生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、自我の欲求、自己実現欲求の5つです。
文字を見るとわかりますが、左の欲求から順番に充足されていき、
一度充足された欲求は今後モチベーションの源泉になり得ません。
(我々が3食宿付き、しかし給料はゼロだと働く気がおきないのは得られた給料の一部で既に衣食住が完結しているからですよね。)
しかし、例外的に「自己実現欲求」は決して満ちることがありません。
(お金はいくらあっても足りません。笑)
●マグレガーのX・Y理論
マグレガーさんは人間(特にサラリーマンがピンときます)を2つに分けました。
X:できることなら仕事をしたくない人
Y:自分の目的のためなら進んで仕事をしたい人
(僕はXです。)
この2種類の人間をうまく管理するためのコツは、
X:命令と統制による管理(目標設定の上強制的に達成する動きをさせる)
Y:目的による管理(個人の目標を設定し、自律的に達成させる)
としています。
●ハーズバーグの動機付け・衛生理論
これは5大欲求に通ずるところがあります。
衛生要因:不満足要因(会社の方針、給与、人間関係など)
動機付け要因:満足要因(達成感、やりがい、昇進など)
というふうにモチベーションの源泉を2種類に分けています。
(給料も低くて人間関係も最悪ではやりがいとか達成感を得たいなんて気持ちになりませんよね。)
ハーズバーグさんは、高い次元の欲求を満たすためには動機付け要因の方を改善する必要がありますよ、と示しています。
具体的な方法として「職務充実」(ジョブ・エンリッチメント)をあげています。
これは裁量権を拡大して仕事の質を充実させることです。
これを垂直的拡大、と表現します。
●アージリスの未成熟・成熟理論
「垂直的拡大」があれば「水平的拡大」もあります。
アージリスさんは、仕事の質のほかに範囲の拡大、つまり「職務拡大」
(ジョブ・エンラージメント)を示しています。
●チクセントミハイのフロー心理学
チクセントミハイさんは人が何かに没頭している状態を「フロー状態」と表現しています。フロー状態において人は充実感を得ることができ、自分自身や環境を完全支配できている感覚に陥ります。これを「フロー経験」と呼びます。
●ホワイトのコンピテンス概念
コンピテンスとは有能性という意味で、人は自分の今までの経験や学習によって培った能力を活かせる機会に置かれると意欲が湧いてくるという概念であり、
ホワイトさんはこれを「自己効力感」と呼び、動機付けの源泉であるとしました。
●ブルームの期待理論
ブルームさんは、動機付けの強さは報酬の期待される価値(たくさんもらえるのか)
と報酬を得られる確率(どれくらい努力すれば得られそうか?)を掛け合わせたものになると示しています。
ここでいう穂「報酬」は、給与だけではなく、仕事の充実感や人からの尊敬など、動機付けに通ずる全ての要素を指しています。
●マクレランドとアトキンソンの達成動機説
達成動機を持つ人(ナンバーワンになりたい、成功したい人)は個人裁量での仕事を好み、業績に対する迅速なフィードバックを欲し、リスクは50%(成功確率50%)くらいを好む、という考えです。
●中核的職務特性モデル
モチベーションを向上させる5つの職務特性です。(モチベーション向上に意欲的な人は、この職務特性モデルと自分の仕事を照らし合わせています。)
・技能多様性
その仕事は様々なスキルを要するか
・完結性
その仕事は仕入れから販売まで、ワンストップで自分が完結できるか
・重要性
その仕事は自分にとってではなく、社会や顧客にとって重要で価値があるか
・自律性
その仕事は自分で工夫できる裁量が多いか
・フィードバック
その仕事は取り組むことでフィードバックを得られるか
●リーダーシップ
人材のモチベーションを向上させる理論を学んだ「リーダー」もまた、モチベーション向上に不可欠です。リーダーには5つの勢力があり、これを使って人材のコントロールをします。
・合法勢力(組織から与えられた権限)
・報酬勢力(人材への報酬権限を握っているパワー)
・強制勢力(罰則を与える権限を握っているパワー)
・専門勢力(リーダーの専門知識や技術)
・準拠勢力(リーダーの人間的魅力)
●レヴィンのリーダーシップ論
レヴィンさんはリーダーシップには3つのカタチがあることを示しました。
・専制型リーダーシップ(独裁者)
・民主型リーダーシップ(リーダーは集団決定を援助)
・放任型リーダーシップ(個人が自由に決定)
これらの結果を成果と満足度に分けたとき、専制型と民主型は成果は同等であったものの、満足度は民主型の方が高い、という結果になりました。
(言わずもがな、放任型の成果は共に最低でした。)
●リカートのシステムIV理論
リカートさんはさらに細かく、リーダーシップを4つに分類しました。
この4つの中の理想は「参加型」であるとリカートさんは言います。
(つまり参加型が一番民主型リーダーシップに近しいわけですね。)
●フィードラーのコンティンジェンシー理論
経営戦略同様、組織や状況によって最適なリーダー像も変わるという理論です。
フィードラーさんはリーダーを仕事中心型と人間関係中心型に分類しました。
統制しやすい状況下の時は(メンバーがリーダーを信頼しており、リーダーの権限が強い状態)仕事中心型の方が良い業績になります。
また、統制しにくい状況下の時も仕事中心型の方が高く、どちらとも言えない状況においては人間中心型が上手くいくという結果でした。
(顔色を伺って統制をとるのではなく、背中で引っ張った方が良いという結果な気がします)
●ハウスのパス=ゴール理論
リーダーはメンバーのゴール(目標)へのパス(道筋)を示すのが役割であるとする理論です。ここでいう道筋とは、ブルームさんの期待理論です。
「この戦略で、これくらいの仕事をすればこれくらいの確率でこれくらいの報酬を得ることができる!」とメンバーに示してあげることです。
●集団の行動様式
組織とは集団であり、行動には特性があります。
集団の団結力が高まると、集団の行動基準に従う圧力が働きます。
これを集団の凝集性が高くなる、と表現します。
凝集性が高まると、まとまりがよくなるというメリットが生まれる反面、閉鎖的になったり、「集団浅慮」というデメリットが発生します。
集団浅慮とは、個人で考えるより集団で考えた方がかえって当事者意識が薄れ、短絡的に物事を決定してしまう現象です。
また、集団において必ず発生するのが「コンフリクト」です。
リーダーや経営者はこのコンフリクトを解消するだけではなく、逆手にとって成長へ活かす努力(変革へと繋げる)が必要です。
●組織学習
組織学習とは組織が新しい知識を獲得する活動を指し、
低次学習(既存の枠組みの中で相互理解を深める)と高次学習(新しい枠組み、つまり既存の枠組みを越えるための学習)があります。前者をシングルループ、後者をダブルループ学習とも言います。
組織学習はまず個人の信念が変化し、個人の行動が変化し、組織の行動に影響し、組織の結果に繋がるというプロセスを辿ります。