株式会社の設立・資金調達
●会社の設立
・発起設立
発起人が会社設立時の株式全てを引き受ける方法です。発起人とは会社設立時の定款を作成、署名する人で自然人だけでなく法人も発起人になることができます。
・募集設立
発起人が一部の株式を引き受け、残りの株式は別の株主を募集して引き受けてもらう方法です。
●定款の作成
定款とは会社の原則を記載したものです。
・絶対的記載事項
必ず記載しなければならない事項です。会社の目的、商号、本店所在地、設立時出資額、出資最低額、発起人の住所、氏名が記載事項です。
・相対的記載事項
記載は任意ですが、記載することで法的効力が生じる事項です。
取締役の任期延長、株式の譲渡制限など様々です。
特に金銭以外の現物出資、財産引受、発起人の特別利益、会社負担の設立費用は「変態記載事項」と呼ばれ、定款に定めた上裁判所の検査役の調査を受ける必要があります。
・任意的記載事項
記載するかは任意のものです。事業年度機関や取締役、監査役の員数、株主総会の時期などがあります。
●公証人の認証
本店所在地管轄の公証人役場で作成、署名した定款を公証人に認証させます。
●資本金払込
出資金を1つの口座へ振り込みます。募集設立の場合は金融機関から「払込金保管証明」を発行してもらう必要があります。発起設立の場合は預金通帳のコピーなどで良いとされています。
●機関の選任
発起設立の場合は発起人が、募集設立の場合は創立総会にて機関を選任します。
●設立登記、届出
機関の選任後、設立登記を行います。
その後、税務署へ「法人設立届出書」を設立から2ヶ月以内、給与支払事務所設立届出書を設立から1ヶ月以内に提出します。
また、年金事務所へ健康保険、厚生年金の新規適用届や労働基準監督所や公共職業安定所へ保険関係の適用届を行います。
●株式
直接金融には「株式」と「社債」発行があります。
株券の発行は定款に定めることで可能となりますが、2009年からは上場企業は株券が廃止されております。
株式会社では株主名簿を作成し、本店もしくは名簿管理人の営業所に据え置き、株主の権利を保全する必要があります。
●種類株式
種類株式とは株式本来の持分細分化に加えて様々な特性を備えた株式で、種類株式を発行する会社を「種類株式発行会社」と言います。種類株式を発行するには定款に内容を定める必要があります。
剰余金の配当が異なる株式
残余財産の分配が異なる株式(有利なら優先株、不利なら劣後株)
議決権制限株式(議決権ナシの株式も設定可能)
譲渡制限株式(全株が譲渡制限株式の場合株式譲渡制限会社)
※譲渡制限株式の譲渡には会社の承認が必要で、株主からの承認請求が必要です。
2週間以内に返答がない場合は承認されたものとみなされます。
取得請求権付株式(株主が会社に買取請求する権利が付いている)
取得条項付株式(会社が株主の株を強制的に取得できる権利が付いている)
全部取得事項付株式(株式総会の決議で種類株式全てを取得できる)
拒否権付株式(株式総会と別に拒否権付株式総会が開かれ決議要件となる)
取締役・監査役選任権付株式(公開会社の場合は発行不可)
●株式発行
発行株式は「募集株式」と呼ばれ、発行可能株式総数以下である必要があります。
発行可能株式総数の変更には株主総会の特別決議が必要になります。
公開会社の場合、発行可能株式総数の上限は発行済株式総数の4倍以下である必要があります。
株式譲渡制限会社の場合は上限ナシとなります。
・募集株式の発行
公開会社の場合は原則として取締役会の決議が必要で、第三者に有利な条件の場合は株主総会の特別決議が必要です。
株式譲渡制限会社の場合は株主総会の特別決議が必要ですが、株主総会の委任がある場合は第三者に有利な条件であっても取締役会の決議で発行可能です。
・単元株の発行(単元株制度)
定款に定める必要があり、単位増加には株主総会の特別決議が、単位減少には取締役会での定款変更手続きが可能です。また、1000株を超える単元株制度は導入できません。
●株式分割、併合
株式分割は株主に有利なため。取締役会の決議で行うことができますが、
株式併合は株主総会の特別決議が必要です。
●自己株式
株主の所有していた株式を会社で買い取ったものです。自己株式を取得することは会社の財産を株主に分配することになります。
自己株式を取得する場合は原則として株主総会の決議が必要となります。
また、市場取引や公開買い付けによって取得する場合は定款に定めることで取締役会の決議で取得可能です。
新株予約権とは予め決められた条件でその会社の株式を取得できる権利を表します。
発行手続きは募集株式と同様です。また、一定の自由が生じた際に発行済みの新株予約権を会社が取得できるような条件を付した予約権を取得条項付新株予約権と言い、買収防衛策に利用されます。
●ライツプラン
既存の株主に安く株式を購入できる権利、すなわち新株予約権をあらかじめ付与しておき、敵対的買収が行われた場合などの条件を満たすと、新株を発行するという防衛策です。
●社債
社債は取締役会の決議で発行が可能です。社債には普通債の他に新株予約権付社債があります。さらに転換条項付きの場合、新株発行と同時に社債は償還されます。
社債は償還期間が長いため、適切な管理を行うために「社債管理者」を置くことが必要です。ただし、各社債の金額が1 億円以上の場合など、一定の条件を満たす場合は、社債管理者を置く必要はありません。
管理者には銀行や信託銀行がなることが多いです。
●株式会社の計算
・資本金
資本金の最低金額には定めがありません。(0円でも設立可能)資本金の金額は登記事項になります。
・資本準備金組み入れ
株主が払い込んだ金額のうち、2分の1を超えない額については資本準備金に組み入れが可能です。
・増資と減資
資本きは株式発行によって増資が出来、逆の減資も可能です。
減資を行う場合は株主総会の特別決議と債権者保護手続きが必要です、
また、資本準備金の額を減少する場合も、資本金への繰入目的を除き債権者保護手続きが必要です。
・配当
配当には株主総会の普通決議が必要です。また、純資産額が300万円以下の場合は配当ができません。
・計算書類
株式会社では計算書類を作成後10年間保存する義務があります。計算書類には貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表などがあり、
貸借対照表は提示株式総会の終結後遅滞なく公告する必要があります。
さらに大会社の場合は損益計算書も併せて公告が必要です。
(ただし、有価証券報告書を提出している企業は決算公告の必要はありません。)
●上場審査基準
東証一部:流通株式35%以上、最近2年の利益が5億or時価総額500億以上
東証二部:流通株式30%以上、以下同文
マザーズ:流通株式25%以上