労働市場・主要理論
●労働需要と供給
労働需要曲線は実質賃金と労働需要量の関係を表し、労働需要は実質賃金の減少関数となります。
賃金を物価水準で割ったものを「実質賃金」、額面上の賃金を「名目賃金」と言います。
労働供給曲線は実質賃金の増加関数となります。
需要曲線と供給曲線の均衡点にある状況を「完全雇用」と呼びます。
古典派の場合は「非自発的失業は無い」と考えるため完全雇用が成立すると考えますが、ケインズ経済学では名目賃金は実質賃金ほど柔軟に下がらないため、「非自発的失業はある」と考えます。これを「賃金の下方硬直性」と言います。
●総需要・総供給
三つの市場の均衡点を分析するに当たって総需要、総供給の導出が必要です。総需要は財市場と貨幣市場から、総供給は労働市場から導出します。
・総供給曲線
総供給曲線は古典派の場合垂直に推移し、ケインズ経済学では右上がりに推移した後、完全雇用の実現に達した後垂直に推移します。これは名目賃金の下方硬直性を考慮するかしないかの違いになります。
つまり古典派は物価水準に依存しませんが、ケインズ経済学では物価水準の上昇に合わせて国民所得が完全雇用に達するまでは上昇すると考えます。
・総需要曲線
総需要曲線ではIS-LM分析を延長して使用します。
物価の変化はIS曲線には影響を与えず、LM曲線のみに影響を与えます。
LM曲線は貨幣市場からみた需要供給曲線ですので、物価の変化は貨幣の実質価値に変化をもたらします。(実質国民所得が下がります。)
またこのグラフから分かる通り均衡国民所得は物価の減少関数であるため、総需要曲線は右下がりとなります。
・総需要/総供給分析
総供給曲線、総需要曲線を組み合わせると上記のグラフになります。
古典派では総供給曲線の上昇に比例して総需要曲線も上昇しています。
供給に応じて需要が生み出されるという考え方を「セイの法則」と言います。
●政策の効果
財政政策、金融政策によって国民所得が増加すると総需要曲線が右にシフトし、物価の上昇と非自発的失業の減少という効果があります。
ただし垂直部分(完全雇用状態)の場合は物価の上昇のみで国民所得は増加しません。
よって古典派の場合、政策による効果は物価の上昇のみという事になります。
また、総需要曲線が右にシフトして物価が上昇する事を「ディマンドプル・インフレーション」、労働生産性の低下などにより供給曲線が左にシフトして物価が上昇する事を「コストプッシュ・インフレーション」と呼びます。
●マクロ経済学の主要理論
・ライフサイクル仮説
個人の今期の消費は、今季の所得ではなく一生の間に得られる所得から逆算して決められるという仮説です。
消費者が得る所得は「恒常所得(給料)」と「変動所得(ボーナス)」からなり、消費に使われる額は恒常所得によって決められるという仮説です。
・加速度原理
企業の投資は利子率だけでなく、国民所得の変化分に比例して変動するという原理です。
・トービンのq
企業の市場価値を資本の再取得価格で割ったもので、1より大きければ企業は投資を実行する、という考え方です。
・貨幣数量説
貨幣数量説では「貨幣の流通速度」を考えます。これは国民所得で貨幣が生み出される際に、経済全体に投入されている貨幣が一定期間で何回流通したかを表す概念です。
貨幣の流通速度は実質国民所得×物価水準/貨幣量で算出されます。
つまり貨幣量は(1/貨幣の流通速度)×実質国民所得×物価水準で求められます。
よって貨幣量は実質国民所得×物価水準に比例します。
・効率賃金理論
均衡賃金を超える水準の賃金を支払うことで生産性が高まり、利潤を増やすという理論です。(良い人材・資源が集まります。)
●国際貿易理論
・為替レートの影響
為替レートが円高になると輸出が減り、輸入が増えるため純輸出は減少します。
逆に円安になった場合は純輸出が増加します。
為替レートは自国と外国の購買力の比率によって決められるという説です。例えば日本で100円で売られているものがアメリカで1ドルで売られている時、1ドルは長期的には100円になるという考え方です。
・ISバランスアプローチ(貯蓄投資バランス)
純輸出は単に輸出−輸入で決定するのではなく、消費者の貯蓄超過分と政府の財政黒字の合計によっても算出できるという考え方です。(純輸出を国の純益と言い換える考え方です。)
●マンデルフレミングモデル
・固定相場制のマネーサプライ
固定相場制の場合、中央銀行には常に外国通貨と自国通貨を固定された為替レートで交換する必要が生じますので、マネーサプライを自由にコントロールできなくなります。
・変動相場制のマネーサプライ
外国通貨と自国通貨の交換を市場で行う方式にする事で、中央銀行はマネーサプライを自由にコントロールできるようになります。
・固定相場制の利子率調整プロセス
固定相場制の場合、IS-LM分析で考える時、IS曲線は固定となり、LM曲線が右にシフトした分だけ国民所得が増加し、自国利子率は世界利子率まで下がります。
・変動相場制の利子率調整プロセス
変動相場制の場合、IS-LM分析で考える時、LM曲線は固定となり、IS曲線が左にシフトした分だけ国民所得が減少し、自国利子率は世界利子率まで下がります。
・固定相場制の財政政策効果(有効)
・固定相場制の金融政策効果(無効)
LM曲線が右にシフトしますが利子率が低下するため、世界利子率に合わせようと左にシフトしてしまいます。
・変動相場制の財政政策効果(無効)
IS曲線が右にシフトしますが利子率が上がってしまうため世界利子率に合わせようと左にシフトしてしまいます。
・変動相場制の金融政策効果(有効)
LM曲線が右にシフトし国民所得が増加します。