貨幣市場・IS-LM分析
●貨幣市場と貨幣需要
貨幣市場において貨幣とは現金だけではなく預金なども含まれます。
市場に流通する貨幣の供給量の事を「マネーサプライ」と呼び、マネーサプライの統計結果である「マネーストック統計」が日本銀行から公表されています。
貨幣には日常の商取引などを行うための「取引需要」と、預金など、資産を保存するための「資産需要」があります。預金は利子率が債権と比較して低いですが、安全性・流動性(すぐに現金化して使用できる)が高いという側面から資産需要は生まれます。
・貨幣需要関数
国民所得が増えると消費が増えるため、貨幣需要も増えます。よって貨幣需要関数は右にシフトします。
債権の利子率がゼロに近くなると預金つまり貨幣の需要は無限大になります。
これを「流動性のわな」と呼びます。
●貨幣供給
・法定準備預金
民間銀行は一定金額を中央銀行に預け入れる義務があります。
これを中央銀行でコントロールする事を「法定準備率操作」と言います。
中央銀行がコントロールできる準備預金と現金通貨の事を指します。
・貨幣乗数
ハイパワードマネーには貨幣乗数効果が働き、マネーサプライを増加させます。
例えば中央銀行がA銀行に100億供給し、B企業へ90億貸付、それをC企業に支払い、今度はC企業が借入しているD銀行に90億返済、D銀行は81億を貸付、と繰り返すとA銀行は10億、D銀行は9億と預金額が増えていき、マネーサプライは増加します。これが貨幣乗数です。
C/D:現金預金比率 R/D:法定準備率とすると、
(C/D+1)/(C/D+R/D)=貨幣乗数となります。
●LM曲線
財市場における国民所得の変化と利子率の変化の関係を表します。
貨幣需要には「利子弾力性」と「所得弾力性」があり、
利子弾力性が大きいとLM曲線の傾きは緩やかに、小さいと急になります。
また、所得弾力性が大きいと右にシフトし、小さいと傾きが緩やかになります。
●投資関数
利子率が変化すると、総需要の構成要素の1つである「投資」に影響を与えます。
ケインズは投資は利子率を投資の限界効率が上回る時、投資は実行されると提唱しています。つまり、利子率が上昇すると投資額は小さくなります。
(預金の方が良いのでは、と考えます。)
●IS曲線
貨幣市場における国民所得の変化と利子率の変化の関係を表します。
IS曲線の傾きは「投資の利子弾力性」や「限界消費性向」で変化します。
●IS-LM分析
財市場と貨幣市場が同時に均衡する点を分析します。
・財政政策
財政政策(政府支出の増加、減税)を実行すると、IS曲線が右にシフトします。
IS-LM曲線分析では利子率の変化を考慮していますので、実際には利子率上昇分国民所得が減少します。これを「クラウディングアウト」と言います。
この時、LM曲線の傾きが緩やかであればあるほどクラウディングアウトが小さくなり、財政政策の効能は高まります。
また、流動性のわなが生じている時LM曲線は水平ですので、
財政政策の効能は非常に高まります。
・金融政策
金融政策(中央銀行のマネーサプライコントロール)を実行すると、LM曲線が右にシフトします。その時国民所得は増加し、利子率は低下します。よって金融政策ではクラウディングアウトは発生しません。
この時、IS曲線の傾きが緩やかであればあるほど金融政策の効能は高まります。(利子弾力性が高いので)